【読書感想】矛盾社会序説(御田寺圭|イースト・プレス)


読者の皆さん、こんにちは。バーチャルブロガーのコトハです!

今日の記事は読書感想。

今年に入ってからじわじわとページを捲っていた『矛盾社会序説』を読了しましたので、感想をしたためがてら本の紹介をさせていただきます。

noteで連載していたWebマガジンの書籍化ということですし、著者もTwitterやニュースサイト等で名の知れている方ですから、もうとっくに読まれた方も多いとは思いますけどね。

建前を取り払い、本音を暴き出す社会論

ジャンルとしては社会論を扱った書籍ということになるでしょうか。現代人が目をつぶってきた領域に光を当て、社会に厳然と存在する矛盾を明るみに出す……そういう本でした。

ただし、いわゆる「社会学」には背を向けている印象を受けます。

社会学者が得意とする「自説に沿うような都合のいいデータだけを選んで載せる(チェリーピッキングってやつですね)」手法をとらず、客観的な統計データ……すなわちエビデンスを基盤にロジックを構築する。章の末尾にまとめを載せている構成もあって、『反社会学講座』をリスペクトしているのかなと個人的には感じました。

【読書感想】反社会学講座(パオロ・マッツァリーノ|ちくま文庫)

『反社会学講座』は以前記事にしたことがありましたので、詳しくはそちらをご覧ください。

『矛盾社会序説』は『反社会学講座』の精神を受け継ぎつつ、各種のデータを最新のものにアップデートした本という印象ですね。

「かわいそうランキング」という概念

本著について特筆すべきは、「かわいそうランキング」という概念を提示したこと。

たとえ一様に「弱者」とカテゴライズされる対象であっても、人はこうして「自分にとって誰が、よりかわいそうな存在か」をつねづね優劣づけながらやさしさを分配している。

(中略)

弱者救済の優先順位やその質量は、世間に「かわいそう」だと思ってもらえる要素をどれだけ持っているかの序列、すなわち「かわいそうランキング」によって支配されている。

――『矛盾社会序説』p.23

たとえば、電通に新卒で入社した女性が過労死した話。あの事件は大きな衝撃をもって社会に受け止められたましたが、では、それまでの過労死事件ではなぜわたしたちの社会はさしたる衝撃を受けなかったのか?

その理由は、電通の新卒女性が「かわいそうランキング」上位の存在である一方で、それ以外の過酷な労働に従事する人々……たとえば運輸業や建設業に勤める人はそうではなかったからだ、と著者は指摘するのです。

かわいそうだと思ってもらえない人々の被る不利益は、しばしば無化される。そんな不都合な真実を「正しさ」であるとして覆い隠し、見ないふりをしてきた現代社会の不公平を暴きたてる内容となっています。

ジェンダー問題に潜む欺瞞、労働問題、無縁社会……さまざまな角度から分断が進み、世界が「万人の万人に対する闘争」へと向かっているのが現代であるように思います。時代に望まれて出てきた本、と言えるのではないでしょうか。


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